なぜレコアさんは、シロッコのもとへ行ったのか? 〜『Ζガンダム』から考える、依存と「分かってほしい」という心〜


最近、『Ζガンダム』を少しずつ観てる。

で、

「登場人物、みんなめんどくさい」

ってのは前に書いた通り(笑)。

そんな中で特に、

「この人、よう分からんなぁ・・・」

ってなるのが、

レコア・ロンド。

レコアさんね。

エゥーゴにいて、

クワトロ大尉の近くにいて、

重要な任務も任されて、

仲間からも信頼されてる。

なのに最終的に、ティターンズ側のシロッコのところへ行ってしまう。

思想に共感した?

ティターンズの行動理念に惹かれた?

いや、どうやらそうじゃない(笑)。

むしろ、

「女として見てほしい」

「分かってほしい」

「安心したい」

そんな感情が、何重にもねじれた末の裏切り。

今日はそんなレコアさんから、人間の「依存」について考えてみた。

☆

劇中、シロッコがレコアについて、

「依存心が強い」

的な趣旨のことを言うんよね。

これ、かなり核心やと思う。

ここで、

「“女は”依存心が強い」

なんて簡単に片づけるのは雑。

男だって依存する。

会社に。

肩書きに。

上司に。

あるいは、

思想に。

酒に。

恋人に・・・。

まっつんスタイルも、たぶん色んなものに依存して生きてる(笑)。

ただレコアの場合、その依存心が、

「“女として”誰かに受け止められたい」

っていう欲求と、かなり強く結びついてるように見えるよね。

☆

で、ここが、レコアさんのおもしろいところ。

だってレコアって、見た目にはかなり成熟した大人。

危険な潜入任務もこなす。

モビルスーツにも乗る。

年下のカミーユやファから見れば、完全に「大人の女性」。

しっかりと自立してる

弱音も吐かない。

でも、内側では常に、

「私を見てほしい」

「私を必要としてほしい」

「誰かに安心させてほしい」

そんな欲求がずっと渦巻いてる。

外側は大人。

内側は・・・、意外なくらい「誰かに支えてほしい子ども?」が残ってる(笑)。

☆

で、クワトロ大尉。

レコアは、明らかにクワトロ大尉に気がある。

でもこのクワトロ大尉がまた、絶望的にその気持ちを拾わない(笑)。

レコアに対して、一切干渉も束縛もしない。

自由にする。

一人の兵士として能力も認めてる。

大人として“素振り”は見せる。

一見、めちゃくちゃ理解のあるいい男。

でも、レコアが欲しかったものは、そんなことだけじゃなかったんよね。

「自由にしていい」

じゃなく、

「ここにいていい」

あ、いや、

「ここにいて欲しい」

が欲しかったんやと思う。

この違い、レコアの心理的には、あまりにデカい。

☆

人って、

「自由になりたい」

ってよく言う。

束縛されたくない。

好きなように生きたい。

誰かに指図されたくない。

でも、ホンマに完全な自由を渡されたら、けっこうしんどい(笑)。

全部自分で決めなあかん。

全部自分で責任を取らなあかん。

誰も方向を示してくれない。

誰も、

「それでいい」

って保証してくれない。

実はひたすら不安。

だから時々、

「こっちやで」

「大丈夫」

「俺についてこい」

そう言ってくれる人が側にいることの方が、めっちゃラクやったりする。

ある意味支配される。

でも、安心する。

これって矛盾してるようで、たぶん人間の中では普通に両立してる心理なんよね。

自由でいたい。

でも、どこか委ねたい・・・。

☆

ここでシロッコ登場(笑)。

まぁ、この男は怖い。

レコアが自分で言葉にできてない感情を、いとも簡単に見抜いてしまう。

「強い女として生きることに疲れてるんちゃう?」

「ホンマは安心したいんちゃう?」

「俺ならそれを与えてやれるで」

みたいなことを、言葉巧みに差し込んでくる。

もちろん関西訛りじゃないけど(笑)。

そりゃ、

「え? この人、私を分かってくれる?」

ってなる。

クワトロが拾わなかったものを、全部拾う。

女心に関しては、赤い彗星、シロッコに完敗(笑)。

☆

でもここで、ちょっと怖いことにも気づくよね。

「分かってくれる人」

って、必ずしも、

「自分を大切にしてくれる人」

とは限らんってこと。

シロッコという男の行動規範を見れば一目瞭然(笑)。

相手を理解できれば、助けることができる。

でも同時に、操ることもできる。

これは、

恋愛でも、

営業でも、

宗教でも、

政治でも、

占いでもそう。

人って、自分でも説明できんかった気持ちを、誰かに、

「あなた、本当はこうじゃね?」

って言い当てられると、一気に心を許すことがある。

「え! この人、分かんの!?」

って。

でもそれって、けっこう危ない。

理解は、優しさにもなる。

そして時に、支配にもなりうる。

☆

そう考えると、シロッコって、レコアを理解したからこそ、支配できた男ってことよね。

クワトロは、支配しなかった。

でも、理解もしなかった。

いや、できなかった?(笑)

レコアは、自由だった。

でも、その自由に疲れた。

そして、自分を“理解してくれる支配者”のところへ行った。

なんとまぁ皮肉・・・。

☆

じゃあ、レコアの悲劇は「依存したこと」なんやろか?

まっつんスタイルは、そこじゃない気がする。

問題は、

「依存したい自分を、自分で認められなかったこと」

これなんちゃうかなと。

強い女でいたい。

自立した大人でいたい。

弱く見られたくない。

でも本当は、

寂しい。

甘えたい。

抱えてほしい。

女として見てほしい。

でもだったら、

「寂しい」

って言えばいい。

「私を見て」

って言えばいい。

「もうちょい構って(笑)」

って。

でも、それが言えない・・・。

☆

こういうことって、大人になるほど起きがちよね。

子どもなら、

「寂しい!」

「怖い!」

「抱っこ!」

って言える。

めちゃくちゃ素直(笑)。

でも大人は、

「別に・・・」

(笑)。

本当は寂しい。

でも、

「平気・・・」

本当は傷ついた。

でも、

「なんでもない・・・」

本当は助けてほしい。

でも、

「大丈夫・・・」

大人は時に、子どもよりめんどくさい(笑)。

☆

だからレコアって、大人やから拗れたんじゃなくて、

“大人であろうとしすぎて拗れた”

とも思うんよね。

弱さを見せない。

依存しない。

自分で何とかする。

そうやって頑張りすぎた結果、

依存心が消えたんじゃなく、“地下に潜った”。

で、地下に潜った欲求って、ある時、変な形で出てくる。

レコアの場合、きっかけは、シロッコのビンタ?(笑)

そこからシロッコへの傾倒に向かったんかな、と。

☆

あと、彼女にはもう一個、無視できない傷がある。

地球で受けたという、

「辱め」。

作中では、その具体的な内容までは語られん。

でもレコア自身、この出来事を何度か口にする。

つまり彼女の中では、それだけ大きな傷として残ってるんやろう。

このことを踏まえると、レコアの男に対する感情って、さらにややこしく見えてくる(笑)。

男に傷つけられた。

男を信用できない。

男は女を道具として扱う。

女を辱める。

でもその一方で、

「男に求められたい」

「女として見てほしい」

「安心させてほしい」

「自分を受け止めてほしい」

・・・これ、どうやら、

「何回転ねじれとんねん?」

って話みたい(笑)。

☆

でも、実際の人間って、案外こういうもん。

傷つけられたから、その対象を完全に拒絶できるとは限らん。

むしろ、

「今度こそ大切にしてほしい」

「今度こそちゃんと受け止めてほしい」

そんな欲求が、余計に強くなることだってある。

そう考えると、クワトロの態度は、レコアにとって相当しんどかったんかもしれんよね。

一人の兵士として認めてくれる。

束縛しない。

自由にしてくれる。

でも、

「女としての私」

には、踏み込んでこない。

レコアからすれば、

「この人もまた、私を女として見てくれない・・・」

そんな寂しさがあったんかな、と。

☆

そこへ現れたのが、シロッコ(笑)。

この男は違った。

レコアが隠していた寂しさも、

依存心も、

女として求められたい欲求も、

全部見抜いてしまう。

だからレコアは、

「この人なら分かってくれる」

と思った。

思ってしまった。

男に傷つけられた経験を、別の男によって埋めようとした?

そんなふうにも見える。

でも、ここが『Ζガンダム』の意地悪なところ(笑)。

そのシロッコこそ、人の心を読み、人を自分の側へ引き寄せ、使うことに長けた男でもある。

つまりレコアは、

「男に道具として扱われたくない」

と思いながら、最も巧妙に人の心を操る男のもとへ行ってしまった。

これまたなんという皮肉・・・。

☆

そして最後。

エマとの戦いの中で、レコアは言う。

「男たちは戦うことばかり」

「女を道具として使う」

「あるいは、女を辱める」

それに対してエマは、

「あなたは女でありすぎた!」

と、言葉を返す。

これがまた、めちゃくちゃ重い。

エマだって女。

恋愛感情もある。

誰かに愛されることと無縁な人でもない。

でも、

女である自分、

兵士である自分、

仲間である自分、

自分で判断する一人の人間としての自分。

その全部を持ったまま生きてる。

一方のレコアは、

「女として誰かに求められたい自分」

があまりに大きくなってしまった。

だから、

「女でありすぎた」

女であることが悪いんじゃない。

“女として満たされること”に、自分という人間を預けすぎた。

そんな意味にも読めるよね。

☆

そして、レコアが最後に返す、

「エマ中尉、分かってよ・・・」

これが、なんとも切ない(笑)。

考えてみたらレコアさん、最初から最後まで、

「分かってほしい」

なんよね。

クワトロに分かってほしかった。

でも分かってもらえなかった。

シロッコには、

「この人なら分かってくれる」

と思った。

そして最後には、エマに、

「分かってよ」。

ずっと強い大人の女として振る舞ってきた人が、最後の最後に出した言葉が、

「分かってよ」。

なんとも子どもっぽくて、

なんとも素直で、

なんとも悲しい・・・。

☆

そう、ここで大事なのは、

「分かること」

と、

「肯定すること」

は違うってこと。

エマは、レコアの苦しみを理解しようとすることはできる。

でも、

だから仲間を裏切ったことも、

シロッコについたことも、

全部、

「そうよね、仕方なかったよね」

と肯定する必要はない。

ここがシロッコと違うとこ。

シロッコは、レコアを理解し、その心へ入り込んだ。

クワトロは、彼女を尊重したけど、心を拾えなかった。

エマは、彼女の苦しみを見ながらも、

「でも私は、あなたとは違う」

と言った。

もしかすると、人と「分かり合う」って、実際はこのくらいの距離感なんかもしれんよね。

全部同意することじゃない。

相手と同じになることでもない。

「あなたがそう感じたことは分かる。でも、私はそうは生きない」

そこまで含めて、“理解”。

☆

たぶんレコアさんは、単純に男を嫌っていたわけじゃない。

むしろ、

“男を必要としてしまう自分を、最後まで持て余してた”。

レコアさんの裏切りが、どうにも分かりにくいのは当然なんかもしれん。

本人自身が、自分の中にある矛盾を、最後まで持て余してたみたいやから(笑)。

☆

ここで改めて思うのが、

「ニュータイプって、なんなん?」

ってこと(笑)。

人の気配を感じる。

相手の存在を察知する。

分かり合える可能性を持った人類。

でも結局、レコアは最後まで、

「分かってよ・・・」

って言わんとあかんかった。

クワトロだって、目の前にいたレコアの寂しさを拾えんかった。

これってつまり、

「感じ取れること」と「理解できること」は別。

さらに、

「理解できること」と「素直に伝えられること」も別。

ニュータイプでも、言わんと分からん(笑)。

当たり前なんやけど、Ζガンダムを見てるとホンマにそう思う。

もどかしい(笑)。

☆

最後に、あの有名なクワトロのセリフに触れる。

「サボテンが、花をつけている・・・」

初見やと、

「は? お前なに言うとんねん?」

なんやけど(笑)。

でも、レコアさんのことを考えながら見ると、実はものすごく切ない一言。

サボテンって、トゲがあるやん?

で、乾いた場所でも耐える。

一人でも生きられそう。

強い。

でも、花も咲く。

そう、これが、“レコアそのもの”。

あの瞬間、クワトロはサボテンにレコアを見た。

強い女として生きてる。

尖ってる。

一人でも大丈夫そう。

でも本当は?

柔らかい部分がある。

厳しい環境に耐えてる。

大事にしてほしい、愛してほしい・・・。

☆

クワトロは、その花が咲いてる時には気づかなかった。

でも、レコアがいなくなってから、

「あれ?」

って気づいた。

遅い(笑)。

でもこれ、俺らも人のこと笑えんとも思う。

人間関係って、「いなくなってから気づく」っていうベタなこと、実際にあるから。

「あの言葉、SOSやったんかな?」

「あの時、もっと話を聞いとけば・・・」

「あの態度は、寂しさの表れやったとか?」

その時は、

ただの愚痴、

ただの不機嫌、

ただのわがまま、

そう思って流す。

でも後になって、

「あれ、花やったん?」

って分かる・・・。

☆

だから、

「サボテンが花をつけている」

って、

実はめちゃくちゃ人間臭い言葉。

大事なものって、目の前にある時ほど見えん。

なくなって初めて、

「あぁ、あったんや・・・」

って分かる。

ニュータイプだろうが、赤い彗星だろうが、このへんは俺らと同じ(笑)。

☆

さてさて、結局、レコアは素直じゃなかった。

クワトロは鈍かった。

大事なことに、あとから気づいた。

シロッコは分かりすぎた。

そして、その理解を支配に使った。

エマは分かろうとした。

でも、レコアの生き方までは肯定しなかった。

全員がちょっとずつ違う。

全員ちょっとずつねじれとる(笑)。

これぞ『Ζガンダム』。

☆

たださっきも言った。

考えてみれば、現実の俺らも似たようなもん。

自由でいたい。

でも誰かに委ねたい。

大人でいたい。

でも甘えたい。

強く見せたい。

でも安心したい。

分かってほしい。

でも自分からは言いたくない・・・。

人間って、ひたすら矛盾だらけ。

ひたすらめんどくさい(笑)

☆

レコアさんの裏切り。

政治思想。

恋愛感情。

女心。

承認欲求。

依存。

安心。

いろんなものが混ざってるんやろう。

だからこそ、あんなに分かりにくい(笑)。

アーガマに敵対する時のあの葛藤とか、見てるこっちは意味わからん。

「じゃあなんで裏切ったん?」

って(笑)。

でも、その分かりにくさこそ、人間っぽい。

まっつんスタイルの大好物(笑)。

人は、一つの価値基準だけで生きてない。

自由を求めながら、

支配を求める。

自立したいのに、

甘えたい。

大人なのに、

子ども。

そんな矛盾を抱えながら生きてる。

だから、レコアさんはめんどくさい。

でも、そのめんどくささを笑ってる俺らも、同じようにめんどくさい(笑)。

自分の中のその矛盾に気づいて、

「あぁ、人間ってこんなもんか」

って少し笑える。

もしかしたら、そこからようやく、大人って始まるんかもしれんね☆


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